【エッセイ】ユーフォニアム奏者・今村耀の『ユーフォの小径』第1回「新卒1年目、音楽家。呪いにかかる。そして解放される」



 

埼玉県を拠点に幅広く活躍されているユーフォニアム奏者の今村耀さんが、ユーフォニアムと生きる日常からの気づきなどをテーマに綴るエッセイ「ユーフォの小径」。

今日は新連載第1回「新卒1年目、音楽家。呪いにかかる。そして解放される」です。

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とにかく猪突猛進。自分にできることならなんでも頑張ってやってみよう。チャレンジしてみよう。そんな気持ちを抱いて、日々の仕事に取り組んでいた。たくさんの場所で演奏をしていく中で、できる限り素敵なプレイをしていく。毎日が楽しい。そんな中、とある本番で起きた一瞬のイレギュラーが、その後の演奏に長く影響を与えることになった。

トリガーになったのは、音楽フェスのオーケストラで演奏中の出来事。
オーケストラ単独になるバラードで新卒の自分に偶然にも回ってきた大ソロ。音が引っかかりそうな気配を感じ、気合いで踏ん張って、しっかりと音を着地させようとした瞬間の出来事だった。しっとりとした空気には似つかわしく無い、甲高く響く声がアリーナから聞こえてきたのだ。記録に残るために、目立とうとする行為があるとは聞く。単純にその場を楽しむあまり、静かな曲に似合わない声をあげてしまったのか。
音の着地は根性もあって上手にできたし、その後のポップナンバーもアリーナと一体になって盛り上がり、良いパフォーマンスできた。あの声はなんだったのか。私は本当に上手くやれていたのだろうか。必要のない神経質さが、自分自身のストレス指数を上げていく。

後日、配布された映像を見て、ユーフォニアム・ソロの部分を確認した。やはり聞こえた、バラードの中に異質に入り込む、シーンに合わない声。私は驚いて萎縮していた。

しばらく経った頃、素早いフレーズやアクティブな音楽の中では問題なく演奏できるのに、特定の状況下でその音が出てくるとうまくいかなくなるイップスのような症状が現れはじめる。あのバラードのような雰囲気の中で「その音」を出すことに恐怖心が生まれ、できたことができなくなったことを自覚した。たった1回の出来事が自分に呪いをかけた。

恐怖心には勝とうとしない。練習の中で呪いが発動しても、抗わずに受け入れて、淡々とやり過ごすこと。呪いが発動しなかったときの音を、すこぶる褒めて誇りに思うこと。自分に優しくするのではなく、向き合う力を与えていくことが大切だった。できなくなったから練習する。調子を取り戻す。こうやったらうまくいくよ。という考えも大事だが、この方法は危険度が高い。条件を揃えにくい。別の角度からも考え、障害物を避け、違う道を進めるようにしたことが解決に繋がった。

あの頃より進化した自分、誕生。新しい自分に出会えたことで、呪いが息を潜めてくれた。

簡単に書いてはいるが、ここまで来るのに何年もの時間を費やした。焦らず慌てず慎重に。崖から転がり落ち、クレバスの底から這い上がっていくような、途方もない時間だ。近道を行こうとか、ふと沸いてきた邪念や悪魔の囁きを振り切って、見えないくらい小さな一歩を進んでいくことが必要だったのは間違いない。

この経験を通し「自分を大切にすること」何事も最後はそこに行きつくのだと、改めて気づかされた。そして、それが一番大事なことだと、日々感じている。

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「ユーフォの小径」は下記URLのカテゴリに入れていきますので、まとめて読みたい方はこちらから。
https://windbandpress.net/category/column/essay-column/euphos-path

以前のエッセイ「音楽とお茶の愉しみ」も合わせてどうぞ。
https://windbandpress.net/category/column/essay-column/imamura


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